労災とは?
労災とは労働災害を略した言葉で、労働災害保険(労災保険)によって治療や生活の保障をする制度です。
業務上の理由で従業員が怪我や病気になった場合に適用されます。従業員は、会社を通じて労災保険の給付請求を労働基準監督署長に対して行います。
会社は労働安全衛生法に基づく管理責任があります。労働災害の補償と報告義務は労働基準法の規定です。労災は労働者災害補償保険法によって定められています。
業務災害と通勤中災害
労災は、業務災害と通勤中災害の2種類です。
業務災害は「業務遂行性」と「業務起因性」があります。業務遂行性は、業務中または業務以外でも会社の管理にある場合です。業務起因性は、業務中の行為が原因で発生した怪我や病気を指します。
通勤中災害は、通勤中に発生した事故による怪我などです。
建設業における労災保険の仕組みとは?
建設業は元請業者の労災保険を利用します。
保険料率は、請負金額に労務費率を乗じた金額を基に算出します。従業員に対して適用され、雇用主や1人親方、個人事業主などは労災保険特別加入制度を利用します。
労災保険料の算出は、単独有期事業と一括有期事業の2種類あります。単独は大規模工事用で「現場労災」とも呼ばれ、下請業者も補償対象です。一括は小規模の複数の工事に対して年度ごとにまとめて行います。
労災保険給付の種類6選
労災保険給付の種類は複数あります。
補償される給付は、怪我や病気の程度に応じて決まります。障害補償や休業補償には特別支給金もあります。社会復帰促進等事業の一環で支給されるものです。亡くなった場合の遺族補償給付や葬祭料、障害で介護を受ける場合の介護保障給付もあります。
業務災害と通勤中災害は厳密には名称が異なりますが、業務災害の名称で紹介します。
労災保険給付の種類1:障害補償給付金
障害補償給付金とは、業務や通勤中の災害による怪我や病気が落ちついた後に第1級~第7級の障害が残った場合の支給金です。
支給額は障害の等級によって支給される日数が異なります。第1級は給付基礎日額の313日分で等級が下がるほど支給日数も少なくなり、第7級は131日分です。
算出の基準となる給付基礎日額は、怪我や病気になる直前の3カ月間賃金を総日数で割った金額です。
労災保険給付の種類2:障害特別支給一時金
障害特別支給一時金は、怪我や病気が落ちついた直後は必要になるお金が多いことからまとめて支給される制度です。
第1級は342万円、第7級は159万円の特別支給金が前払いされます。特別一時支給金は第8級~第14級も対象です。第8級は算定基礎日額503日分の65万円、第14級は56日分の8万円が支給額です。
障害補償給付に加えて支給される金額で、算定基準を使用せず一定額です。
労災保険給付の種類3:障害特別支給金
障害特別支給金は、障害補償年金受給者に加算給付される年金です。
障害が落ちついた障害等級第1級に算定基礎日額の313日分、第7級の131日分が支給されます。
算定基礎日額の算出方法は、算定基礎年額に事故前の1年間に受け取ったボーナス(賞与・特別給与)を加えます。給付基礎年額の20%または150万円を加えた金額が算定基礎年額の上限です。
労災保険給付の種類4:療養補償給付金
療養補償給付金は、被災した受診者が労災病院や労災指定病院などを受診した際の治療費が無料になる制度です。
労災指定病院以外を受診した場合は、受診者が立替えた後に本人に支給します。金額は健康保険の範囲内です。給付対象は診察や手術、処置や薬剤の他、入院費やその看護、在宅療養中の訪問看護、通院費用などです。
在職中の給与に関係なく支給され、怪我や病気が快復するまで支給されます。
労災保険給付の種類5:休業特別支給金
休業特別支給金は、労災による怪我や病気で労働できない場合に支給される休業補償に上乗せされる制度です。
支給額は給付基礎日額の20%です。怪我や病気の程度によって労働した場合は、給付基礎日額から労働して得られた賃金を控除した額に変更されます。
支給開始は休業を始めて4日目からです。体調によって勤務できる日が異なるので、支給期間は一時的に中断しても快復するまで継続されます。
労災保険給付の種類6:休業補償給付金
休業補償給付金は、労災によって働けなくなった4日目から支給されます。
算出基準の給付基礎日額は、被災直近の3カ月間の賃金の総額を総日数で割ったものです。賃金締切日がある場合は、直前の締切日で算出します。休業1日当たり給付基礎日額の60%が支給額です。
働けなくなった1日目から3日目までの期間は、労災ではなく事業主が労働基準法に基づいて休業補償給付金と同額を支給します。
労災がおりるための条件
労災がおりるための条件は、労働基準監督署に労働災害と認定されることです。
怪我や病気が仕事をしている状態と認められる状態であった「業務遂行性」と仕事が原因であると関連付けられる「業務起因性」がポイントです。
労災の申請には事業主の証明も必要です。所定の様式の書類を使用して事業主が申請します。労働保険番号や労働者の住所・氏名、事業所の名称や住所、怪我や病気の発症した日付などが必要です。
労災がおりない例5選
従業員が怪我や病気になっても、労災がおりない例もあります。
事業主の管理下で通常の業務をしていれば起きなかったような場合や予想に反する行為を行った場合は、業務起因性がないので労災認定されません。
また、勤務中であっても私的な行為で起きた場合もおりない例です。通勤途中は管理下ではありませんが、業務起因性があるので認定されます。
判断は労災申請を受けた労働基準監督署が行います。
労災がおりない例1:意図的に災害を発生させた
勤務中に意図的に労働災害を発生させた場合、労災はおりません。
通常の作業と異なる場所や手順、機械操作などによって怪我や病気になっても、労働災害ではありません。事業主が安全管理に基づいて指定した手順を守らなかった作業者のミスです。
労災がおりない例ですが、事業主は監督責任や安全管理体制の不備・安全教育の不足を問われる可能性があります。
労災がおりない例2:個人的な恨みによるもの
労災対象の時間帯に、従業員が個人的な恨みで第三者から暴行などを受けて負傷した場合は、労災がおりない例です。
通勤途中や昼休憩などの時間の怪我であっても、業務起因性が認められない場合は労災認定の対象外です。怪我の治療費は自己負担で、療養補償給付金や休業補償給付金、休業特別支給金は支払われません。
労災がおりないので事業主が支払う1日目から3日目までの休業補償も対象外です。
労災がおりない例3:自然災害の場合
台風や地震などの自然災害が原因の怪我などは労災がおりません。
自然災害は業務と関係ないので、労災の対象外です。通勤途中に強風や大雨で被害にあっても補償対象にはなりません。
事前に自然災害の発生が予測できた場合は休業や就業時間の変更などの対応をして、災害の発生を未然に防ぐ努力が事業主には必要です。
労災がおりない例4:業務中に業務とは関係のない行為で災害を発生させた場合
労災がおりない例は、業務中に無関係の行為による怪我も含まれます。
業務中に業務以外の作業をしていた、または私用を行っていた際に怪我をしても労災はおりません。本人だけの問題では済まされず、会社側の管理体制を問われる可能性もあります。
会社が注意を繰り返した中で発生した場合は、服務規程違反を適用するなど毅然とした対応も必要です。
労災がおりない例5:私用の寄り道中の場合
通勤途中の私用の寄り道は労災がおりない例です。
通勤するために利用する保育園や学童保育の送迎、食材や日用品の買い物などは認められます。ただし、通勤ルートから極端に離れた場所へ行った場合は寄り道になりません。
営業活動や出張先、配達先での行為も対象です。労災は自宅を出発して会社へ行き、帰宅するまでをフォローします。日頃から従業員に伝えることも大切です。
休憩時間の災害は労災がおりない?
休憩時間中に発生した災害の場合、労災はおります。
休憩時間以外の就業時間前後に職場にいた場合、作業をしていなくても事業主の管理下にあります。業務起因性が認められ、労災認定されます。ただし、休憩時間中に仕事とは無関係の作業を行った場合や私用中の災害は、おりない例です。
会社は従業員に対して労災がおりない例をわかりやすく伝え、安全管理に務めます。
アルバイトや契約社員・パートでも労災は労災がおりない?
契約社員やパートなどでも労災がおります。
アルバイトは全員が労災適用者ではありません。昼間学生ではないアルバイトは労災の適用者で、夜間学校の生徒は労働者として扱います。昼間は学校へ通う学生、4カ月以内の短期間のアルバイトは、労災の適用外です。
同じアルバイトでも、立場が異なると泣き寝入りになります。会社は受け入れる際に説明し、勤務中も注意喚起を行います。
労災がおりる条件を理解しておこう
事業所は労災がおりる条件を理解しておくことが大切です。
従業員を雇用したら、労災保険に加入します。労災がおりる条件とおりない例をわかりやすく従業員に説明して安全教育を行います。労働災害が発生したら、速やかに必要な手続きを行います。
安全管理は事業所の責任です。日頃から作業環境を整えて、従業員と共に労災事故防止の意識を高めましょう。
当サイトの記事は基本的には信頼性に足る情報源(公共機関や企業サイト、または専門家によるもの等)をもとに執筆しており、情報の正確性・信頼性・安全性の担保に努めていますが、記事によっては最新の情報でない場合や情報の出典元表記や正確性が充分でない場合があります。予めご了承ください。
まずは無料でご相談ください