多重派遣で生じる5つのデメリット!多重派遣の例と予防方法も紹介

労務 2020.12.1 2020.12.1
多重派遣で生じる5つのデメリット!多重派遣の例と予防方法も紹介

多重派遣とは何?

多重派遣とは、受け入れた派遣社員の派遣先が新たな派遣元になることで、派遣元が複数になることです。

 

派遣される社員は、派遣元と雇用関係を結んでいます。派遣元と派遣社員は、指揮命令関係はありますが、雇用関係はありません。そうした中で派遣を受けた雇用関係のない社員を別の企業に派遣することは、労働供給(派遣)に当たります。

 

複数の企業が繰り返し派遣する場合も含めて多重派遣と呼びます。

多重派遣は違法

多重派遣は法律で禁止された行為です。

 

労働供給事業は、厚生労働大臣認定の派遣及び紹介事業者、または労働組合などが許可を得て無料で行う場合以外は違反です。違反の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。派遣事業者も承知して契約していた場合は、罰則の対象です。

 

派遣手数料を得た場合は、労働基準法第6条の「中間搾取」違反です。1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

多重派遣で生じる5つのデメリット

多重派遣によって生じるデメリットは、派遣された社員だけでなく派遣事業者や労働供給事業を行った会社全てが受けます。

 

派遣された社員は収入の減少や労働環境の悪化により、心身に多大な影響を受けるでしょう。また、労働供給事業を行った会社と担当者は罰則の対象です。

 

労働者が安心して働ける環境作りに違反する多重派遣のデメリットを説明します。

多重派遣で生じるデメリット1:労働環境が劣化する

多重派遣によって、雇用関係のある企業との契約が変更されてしまい、労働環境が劣化するでしょう。

 

社員は派遣事業者と雇用関係にあります。派遣先での働き方の契約は両者で締結します。しかし、雇用関係のない企業から第三者の企業へ労働供給されると、異なる契約に変更されます。

 

勤務時間や休日、業務内容など最初の契約よりも劣化した環境を強要される可能性があります。労働者に負担がかかってしまう環境と言えるでしょう。

多重派遣で生じるデメリット2:罰則を受ける

派遣事業者以外が労働供給を行うと、罰則を受けます。

 

労働供給事業を行った場合の罰則は、会社に対するもの以外にも、会社の代表者や人事責任者、採用担当者など関係者全員が対象です。供給を受けた会社も罰則の対象になります。

 

また、職業安定法の改善命令などに従わない場合、企業名が公表されます。派遣事業者は事業停止命令や許可の取消など行政処分を受けます。

多重派遣で生じるデメリット3:責任の所在がわからなくなる

雇用関係は賃金の支払いに直結した責任の所在を明確にするためです。

 

多重派遣によって雇用関係が曖昧になると、責任の所在がわからなくなります。賃金の支払いや、雇用条件を守ることなどが反故にされる可能性があります。

 

契約と異なる状態になると、労働者は改善を求める相手を明確にできず、泣き寝入りになってしまうケースも考えられます。

多重派遣で生じるデメリット4:保障が受けられない可能性がある

多重派遣は、勤務中のケガなどの保障が受けられない可能性があります。

 

勤務中のケガは労働災害の対象です。雇用関係のある派遣事業者が保険の申請など対応します。しかし、多重派遣で契約と異なる企業で受けたケガは誰に責任があるか明確にできず、保障が受けられない状態になります。

 

通勤中の事故も労働災害の対象なので、派遣先と異なる場所に移動中の事故は労働災害と認定されません。

多重派遣で生じるデメリット5:収入が減少する可能性がある

多重派遣により、労働者の受け取る収入が契約と異なって減少する可能性もあります。

 

労働供給事業とは、紹介手数料の中間搾取を伴う行為です。労働者は派遣事業者と結んだ契約があり、中間搾取されると、手取り収入が減ります。仲介業者が増えれば、その分減少額も大きくなります。

 

派遣事業者は契約通りの給与を支給しているので、現状把握が困難でしょう。

多重派遣になる2つの例

多重派遣には、偽装請負と異なる派遣先に行くという2つのパターンがあります。

 

多重派遣といっても、様々なパターンがありますが、大きく分けるとこの2つです。請負事業は違法ではありませんが、請負のように見せかける偽装請負もあります。

 

派遣先から異なる派遣先に紹介される労働供給事業と比較して、偽装請負はわかりにくい面が多い雇用形態です。

多重派遣になる例1:偽装請負

偽装請負とは、派遣先で異なる企業の業務を行うことです。

 

派遣社員は契約を派遣企業と交わし、派遣先の指示系統下に入ります。しかし、現場が派遣先でも異なる企業の指示系統下に入る場合は、請負です。結局、派遣先企業は供給事業者として別の会社に派遣する多重派遣になる、偽装請負となります。

 

偽装請負と多重派遣は同一状況なので、多重派遣の罰則が適用されます。派遣先で常駐する職種に多い形態です。

多重派遣になる例2:派遣先の会社から更に違う会社に派遣

派遣先から異なる企業に派遣される場合も、多重派遣です。

 

派遣会社から提示された企業から別の企業へ派遣され、それが繰り返される状態が多重派遣です。契約した派遣先の営業所や支店など異なる勤務地では適用されませんが、契約と異なる状態では、適切とは言えません。

 

派遣事業者が多重派遣になっていることを把握していない場合は、罰則の対象になりませんが、把握した段階で改善しなければ、罰則を受けます。

多重派遣を防ぐ3つの方法

気づかないうちに多重派遣にならないように、企業は対策が必要です。

 

多重派遣は処罰の対象は、法人としてだけでなく関係者全員です。名前を公表されると企業ブランドが傷つき、信用も低下するでしょう。派遣事業者に依頼しても断られ、正社員の採用にも悪影響を及ぼす可能性があるので、人事担当者は注意しましょう。

 

ここからは、企業でできる対策方法を紹介します。

多重派遣を防ぐ方法1:勤務実態の確認を定期的に行う

多重派遣を防ぐためには、勤務実態の定期的な確認が必要です。

 

派遣事業者は、派遣先を訪問して社員の勤務実態を把握しましょう。定期的な訪問は営業活動として行えるので、比較的簡単に実施できます。

 

派遣社員と接触するのも有効な手段です。派遣社員の勤務時間外に、困りごとや悩みがないかアフターフォローとして接触しましょう。

 

受入れ側は、派遣社員との契約を定期的に確認しましょう。雇用の把握は関係者全員で行うことが大切です。

多重派遣を防ぐ方法2:事前に指示系統を確認する

派遣事業者は、事前に指示系統を確認し、受け入れ企業が契約と間違いないか確かめましょう。

 

派遣社員の仕事内容の確認と合わせて、指示系統を確認しましょう。派遣先と異なる指示系統は、偽装請負です。派遣事業者の営業担当が確認すると、ごまかされる可能性もあります。

 

派遣事業者の本部が勤務開始前にリサーチしましょう。実態と異なると思われる場合や疑わしい場合は派遣を停止でき、自社への影響を最低限に抑えられます。

多重派遣を防ぐ方法3:聞き取り調査を行う

派遣社員への聞き取り調査を、派遣事業者の本部が行って、実態を把握しましょう。

 

気づかずに多重派遣されている場合は、労働者も供給事業者も状況がわかっていないこともあります。定期的な面談とは別に、実態把握を行いましょう。サポートメンバー以外が面談すると、異なる視点で話を引き出せます。

 

調査結果は匿名情報として扱い、労働者を保護しましょう。事前に派遣事業者の本部内で体制を構築すると機動力を高めることができます。

リスクを負わないために多重派遣を防ごう

多重派遣は、派遣先から異なる事業所への派遣や偽装請負などです。

 

多重派遣は法令違反で、法人や代表者、人事担当が禁固刑や罰金刑です。労働供給事業者と受け入れ先、派遣事業者も処罰の対象です。多重派遣は労働者の働く環境に悪影響を与えます。

 

法令を確認し、意図せず多重派遣しないように予防策を徹底しましょう。


当サイトの記事は基本的には信頼性に足る情報源(公共機関や企業サイト、または専門家によるもの等)をもとに執筆しており、情報の正確性・信頼性・安全性の担保に努めていますが、記事によっては最新の情報でない場合や情報の出典元表記や正確性が充分でない場合があります。予めご了承ください。

お問い合わせはこちらから

まずは無料でご相談ください

RECOMMENDATION

おすすめコラム

Contact

人材派遣コンサルティングの
ご相談はこちら

優良人材、給与プラン、複数人採用など