アルバイトも社会保険に入る必要はあるのか?加入が必要になる2つの条件を紹介

労務 2021.03.2 2021.03.2
アルバイトも社会保険に入る必要はあるのか?加入が必要になる2つの条件を紹介

社会保険とは?

社会保険とは日本国憲法により制定された国民の生存権を守るため、けがや病気などで国民の生活が損なわれた時に生活を保障する社会保障制度の中の1つの柱です。社会保険以外に社会福祉制度、公的扶助制度、保健医療・公衆衛生があります。

 

社会保険と一口に言っていますが、社会保険は社会保険制度に基づいており、その中には年金や医療保険・雇用保険、労災保険などが含まれています。

社会保険と労働保険

広義の意味での社会保険には雇用されている人が加入している「被用者保険」と、それ以外の一般の人が加入している「一般国民保険」があります。

 

さらに被用者保険の中で狭義の意味での社会保険と、労働保険に分かれています。狭義の意味での社会保険には健康保険・介護保険・厚生年金保険が含まれており、労働保険には雇用保険・労災保険が含まれています。

アルバイトでも社会保険への加入が必要か?

パートやアルバイトは必ずしも社会保険に加入が必要な訳ではありませんが、所定労働時間や勤務期間、従業員数などの条件により加入が必要になる場合があります。

 

従来は直接雇用の正社員とは違い、パートやアルバイトの場合は全員が社会保険への加入が必要という訳ではありませんでした。しかし社会保険の適用範囲は拡大を続けており、アルバイトでも社会保険に加入する必要のある人が増えてきています。

所定の条件を満たすと加入が必要になる

アルバイトで社会保険の加入が必要になる条件があります。例として「所定労働時間が週30時間以上」という条件があります。

 

また所定労働時間が週30時間以内でも、週20時間以上かつ月の賃金が88,000円以上で学生ではなく1年以上の勤務が見込まれている場合などが当てはまります。

アルバイトでも加入する必要のある5つの社会保険

アルバイトでも加入が必要となった場合の社会保険には、「健康保険」・「介護保険」・「厚生年金保険」・「雇用保険」・「労災保険」の5つがあります。

 

社会保険に加入していれば将来的にもらえる年金額が増える他、障害者となった時の年金支給の増額、けがや出産などで健康保険(医療保険)から給付金が出る、社会保険料の半額を企業が負担してくれるなどのメリットがあります。

アルバイトでも加入する必要のある社会保険1:健康保険

健康保険(医療保険)には企業に勤める従業員が加入する「被用者保険」と、「国民健康保険」があり、基本的にどちらかに加入することになっています。

 

アルバイトでも社会保険に加入した場合は、被用者保険の対象となるでしょう。大企業ならば独自健康保険組合を持っていることが多いのが特徴です。アルバイトで社会保険に加入できなかった場合には、国民健康保険の対象となっています。

アルバイトでも加入する必要のある社会保険2:介護保険

アルバイトの中でも満40歳以上を超えている人が加入する必要があるのが、「介護保険」です。介護保険は少子高齢化により介護の重要度が高まることで、2000年に導入された社会保険です。

 

介護保険は40歳以上65歳未満が第2号被保険者、65歳以上が第1号被保険者となります。40歳以上ならば自動的に加入することになります。健康保険料と共に、介護保険料を支払うことになるでしょう。

アルバイトでも加入する必要のある社会保険3:厚生年金保険

アルバイトが加入する社会保険のうち、厚生年金保険は将来、老後を迎えた際に年金をもらうための年金制度の1つです。

 

日本の年金制度は国民年金と厚生年金保険があり、国民年金は20歳以上で60歳未満の者に加入義務があります。企業の従業員として働いて厚生年金保険に加入していると、国民年金にプラスして厚生年金保険がもらえるため、年金額が手厚くなるという特徴があります。

アルバイトでも加入する必要のある社会保険4:雇用保険

雇用保険は労働保険のうちの1つで、労働者の生活・雇用の安定のため、就職を促進する「雇用保険制度」に基づいた社会保険です。

 

離職した際の雇用保険基本手当は、「失業保険」として有名でしょう。その他には「再就職手当」、育児休業期間中の手当である「育児休業給付」、介護で休業した際の「介護休業給付」、「高年齢継続雇用給付」、「専門実践教育訓練給付金」などがあります。

アルバイトでも加入する必要のある社会保険5:労災保険

労働保険のもう1つは労災保険(労働者災害補償保険)で、通勤などの途上でけがや病気になったり、亡くなったりした場合に適用される社会保険です。

 

一般には「労災」と呼ばれることもあります。労働者として業務している最中のけがや病気だけでなく、業務に向かう際の通勤途上も対象になる、というのが特徴です。

アルバイトでも社会保険への加入が必要になる条件2つ

アルバイトは通常、社会保険への加入は必要ありません。ただし特定の条件を満たしたアルバイトは、社会保険に加入する必要があります。加入が必要となる条件は基本的には週あたりの労働時間です。そうではない場合は、より複雑な条件により加入の必要があるかが変わってきます。

 

ここからは、社会保険への加入が必要になるケースについて紹介します。

条件1:1週間の労働時間と1月の労働日数が常時雇用者の4分の3以上

フルタイムの常時雇用者の所定労働時間を週40時間とし、1週間の所定労働時間が30時間以上という条件を満たしていた場合は、アルバイトでも社会保険に加入する必要があります。

 

これは通称「4分の3基準」と呼ばれてきた条件で、社会保険の適用範囲が拡大される前からあった条件でもあります。

条件2:規定の5つの条件をすべて満たす

アルバイトでも社会保険への加入が必要となる条件の2つ目は、5つの細かい条件を全て満たす必要があります。1週間の所定労働時間が20時間以上、賃金月額が88,000円以上、勤務期間が1年以上になっているなどの条件です。

 

これらのいずれかを満たしていなかった場合、社会保険に加入する必要はありません。全ての条件を満たしているか、確認してみましょう。

特定適用事務所の従業員

特定適用事務所とは、現在社会保険に加入している従業員数が6ヶ月以上で500人を超える事業所、または国や地方公共団体の事業所、そして社会保険加入者が500人以下でも社会保険への加入の労使合意がある事業所となっています。

 

民間の事業所であれば、すでに社会保険に加入している従業員が501人以上いるかどうか、500人以下でも社会保険加入について労使合意があるかどうかをチェックすると良いでしょう。

1週間の所定労働時間が20時間以上

1週間あたりの所定労働時間が20時間を見込まれる、アルバイトやパートといった短時間労働者が対象となります。週20時間以上の勤務が見込まれる場合に適用となりますが、残業時間は含まれないので注意しておきましょう。

賃金月額が88,000円以上

賞与や残業手当、通勤手当などの手当類を含まず、月の賃金が88,000円以上となっている場合が対象となっています。

 

パートやアルバイトのような短時間労働の場合は、時間給と勤務時間で計算することになります。分からない場合は、「(時間給×1週間の所定労働時間×52週)÷12ヶ月」の計算式で賃金月額を計算してみましょう。給与の手取り額でも、総支給額でもないことに注意しましょう。

1年以上の勤務見込みがある

雇用期間の定めがない場合や、期限があっても1年以上となっている場合、または勤務期間が半年となっていてもさらに更新する可能性があるアルバイトが対象となります。

 

特定の季節のみ、冬季3ヶ月のみの勤務となっているような場合は、対象ではありません。しかし勤務期間が3ヶ月となっていてもさらに更新する可能性があった場合は対象となります。

学生でない

基本的に学生の方は、パートやアルバイトでどんなに勤務していても社会保険加入の対象とはなっていません。

 

ただし、夜間学生や通信制の大学や高校に通っている学生、定時制に通う学生は対象となっていますので、どんな学生なのかしっかりチェックしておく必要があるでしょう。

アルバイトを社会保険に加入させる2つのメリット

アルバイトやパートとして短時間労働する人にとっては、社会保険に加入することにさまざまなメリットがあります。しかし、企業側にとってはどうでしょうか。

 

アルバイトを社会保険に加入させた場合、企業側も社会保険料を支払う必要がでてきます。単純に、人材にかかるコストが増えてしまうのです。そこまでして社会保険に加入する必要があるのか、アルバイトを社会保険に加入させるメリットについて紹介していきます。

メリット1:良質な人材確保の可能性が高まる

アルバイトにとって社会保険への加入は、将来の年金が増えることや健康保険(医療保険)で給付があるなどメリットが大きなものであるため、加入できる環境を整えておくことで良質な人材を確保できる可能性が高くなります。

 

日本は現在、少子高齢化で人手不足と言われています。人材確保が難しい場合、より良質な人材を確保したい場合には社会保険に加入できるようにすることで、従業員に対する福利厚生を充実させられるでしょう。

メリット2:労務トラブルを回避できる

アルバイトやパートといった短時間労働者であっても、勤務時間他の条件を満たしていた場合は社会保険に加入させておく必要があります。

 

しかし、もしも事業所が加入させていなかった場合、過去2年分の社会保険料の支払いが必要になったり、色々なデメリットが発生したりする可能性があります。アルバイトを社会保険に加入させておけば、こういった労務トラブルを回避できるでしょう。

社会保険を理解して良い人材の確保をしよう

アルバイトやパートだからといって、社会保険に加入しなくてよいという訳ではありません。むしろ最近では、社会保険の適用範囲はどんどん拡大されています。

 

また社会保険に加入させる場合には、企業にとってはコストが増えるというデメリットがありますが、メリットがない訳ではありません。

 

アルバイトの社会保険について理解を深めて活用し、より良い人材を確保していきましょう。


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