求職者から採用辞退を受ける企業の割合
株式会社マイナビが実施した「中途採用状況調査2020年版」によりますと、2019年の中途採用における内定辞退率は全体で22.1%、不動産・建設・設備業種の企業では17.7%となりました。
公務員もこの例に漏れず、熊本市役所では上級事務職の内定辞退が平成30年度から増加しています。千葉県警では例年3~4割が警察官での内定を辞退し、民間企業や警視庁、消防に流れているそうです。
また、北海道庁では平成30年度の内定辞退者が6割を超え、さいたま市にある埼玉県庁でも国家公務員や東京特別区との併願者が多く、ここ数年の間の内定辞退者が約4割となっています。
その他、海上保安庁や教員採用試験での内定辞退率が高いことも、度々ニュースで取り上げられています。
求職者が採用辞退をする心理5選
求職者が採用辞退する心理には、社風が合わなかった、他社で内定が出たため、条件や仕事内容が一致しないため、企業の応対が悪かった、家族の反対、などがあるようです。
それぞれの背景について説明しますので、これから採用活動しようという方は内定承諾率を上げるためにも是非参考にされてはいかがでしょうか。
求職者が採用辞退をする心理1:社風が合わなかった
求職者が採用辞退する心理その1は、社風が合わなかったことです。
求職者は選考が進むにつれて企業の雰囲気や仕事内容、一緒に働く社員などの情報をある程度把握していきますが、その過程で自分には合わない、この企業には馴染めないと感じることがあるようです。
また、インターネットや第三者からの情報で社風が合わないと判断した結果、採用辞退に繋がるケースも存在しています。
求職者が採用辞退をする心理2:他社で内定が出たため
求職者が採用辞退する心理その2は、他社で内定が出たためです。
この場合、自社よりも志望順位が高い企業で内定が出たケースと他社の方が早く内定を出したケースの2つが考えられます。
求職者が採用辞退をする心理3:条件や仕事内容が一致しないため
求職者が採用辞退する心理その3は、条件や仕事内容が一致しないためです。
選考段階では勤務地や給料について大まかな提示となりますが、実際の条件を詳細に伝えることで求職者が納得できないと感じた場合には、採用辞退に至るケースもあるようです。
また、求職者がイメージしていた仕事内容と実際の仕事内容が違う場合にも、辞退する人が少なくないようです。求人広告への書き方や自社イメージの伝え方などにズレがないか、注意が必要です。
求職者が採用辞退をする心理4:企業の応対が悪かった
求職者が採用辞退する心理その4は、企業側の応対が悪かったことが挙げられます。
窓口となる採用担当はもちろん、面接官の行動や態度が辞退に繋がる可能性があります。求職者と顔を合わせる担当者は、企業の顔であることを意識しましょう。
特に、現場で一緒に働く社員が面接する場合、行動や態度と合わせて「この人と一緒に働けるだろうか」と求職者に見られていると考えましょう。
求職者が採用辞退をする心理5:家族の反対
求職者が採用辞退する心理その5は、家族の反対にあったことです。
反対する家族は配偶者や親、子供など家庭によって異なります。配偶者の場合、年収の低下や勤務地が遠くなることを理由に反対を受けるケースなどがあります。
エン・ジャパン株式会社が「家族の転職反対」について行ったアンケートでは、ミドル層の5割が家族の反対を理由に採用辞退したと回答しています。
その他、親の介護や子供の転校に難色を示すなどさまざまな家庭の事情が要因としてあるようです。
内定後に採用辞退されないための対策4選
ここまでは求職者が採用辞退する心理について説明してきました。それでは、どのような対策をとれば採用辞退を防げるのでしょうか。
内定後に採用辞退されないための対策には、面接で既存社員に質問ができる場を設ける、面接日程を早く決める、社内見学の機会を設ける、自社の課題や良い点を伝える、などが挙げられます。
採用辞退されないための対策1:面接で既存社員に質問ができる場を設ける
採用辞退されないための対策その1は、面接で既存社員に質問ができる場を設けることです。
応募者は採用担当や面接官以外の既存社員に聞くことで、選考中にしづらかった質問をしやすくなり、不明点の解消に繋がるでしょう。
このように、採用担当や面接官が相手の場合では形式ばってしまいがちですが、既存社員が相手だとリラックスして自分の聞きたいことが聞けるというメリットがあります。なお、この際に採用担当や面接官が席を外すと効果的です。
採用辞退されないための対策2:面接日程を早く決める
採用辞退されないための対策その2は、面接日程を早く決めることです。
採用辞退の心理で紹介したとおり、辞退理由には「他社の方が早く決まった」というケースが含まれます。社内外との日程調整をスムーズに行い、他社よりも早く内定を出しましょう。
応募者には面接日程の候補を複数提案し、応募者側が選択できるようにしましょう。また、面接官が複数いて日程調整が難しい場合には、出席できる人だけで進めるなど臨機応変な対応が必要です。
採用辞退されないための対策3:社内見学の機会を設ける
採用辞退されないための対策その3は、社内見学の機会を設けることです。
面接前後に職場見学することで応募者の企業理解が深まり、社風や職場環境、どんな人が働いているかなど応募者側が知りたい情報を伝達できます。
職場見学の日時設定は、忙しくない日にするなど注意が必要です。忙しすぎて対応しきれなかったり、職場の雰囲気が悪く伝わってしまうと効果的とは言えません。そのため、事前に職場見学があることを周知したり、応対方法を決めておくとよいでしょう。
採用辞退されないための対策4:自社の課題や良い点を伝える
採用辞退されないための対策その4は、自社の課題や良い点を伝えることです。
自社の良い点だけではなく課題を正直に伝えることで、応募者からの信頼度の上昇が期待でき、ミスマッチを理由とする採用後の辞退防止にも繋がります。
応募者は企業の口コミサイトを目にしている可能性があります。口コミで低評価がついている部分や現状と違う書き込み内容などを事前に把握しておくことで、正しい情報を伝えられます。
また、自社の良い点やメリットを魅力的に伝えることも大切です。応募者が複数の企業で選考を進めている場合には、他社との違いを簡潔に説明できるとよいでしょう。
採用辞退の連絡が来た場合の対応方法4選
それでは、実際に採用辞退の連絡が来た場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
対応方法として、メールで来たらすぐに返信する、冷静に対応する、引き留める場合は相手に日時を合わせる、あまりしつこくしない、などが挙げられます。
正社員採用における辞退の連絡方法はメールや手紙でのお詫び状が一般的で、メールで事前連絡後、応募先へ採用辞退したい旨の一筆を書き郵送するという流れになっています。
採用辞退の連絡が来た場合の対応方法1:メールで来たらすぐに返信する
採用辞退の連絡が来た場合の対応方法その1は、メールで来たらすぐに返信することです。
応募者にとって内定辞退の連絡はハードルが高く、申入れ後に連絡が来ないと「入社することになっていたらどうしよう」「辞退を怒られるのではないか」などと困惑してしまいます。
また、辞退連絡に返信しないことでトラブルを引き起こしたり、企業の印象を悪くしてしまう可能性もありますので、すぐに返信し承諾した旨を伝えましょう。併せて採用辞退届が必要な場合は、書面での提出を依頼しましょう。
採用辞退の連絡が来た場合の対応方法2:冷静に対応する
採用辞退の連絡が来た場合の対応方法その2は、冷静に対応することです。
採用担当者として納得できない気持ちが湧いてくるかもしれませんが、企業の顔として冷静に対応するよう心がけましょう。
また、採用辞退の発生を想定した採用スケジュールを組むことによって、不測の事態に備えることが可能となります。
なお、アルバイトやパートの場合、採用の辞退方法は電話が一般的ですが、こちらも感情的にならずに対応するよう留意しましょう。
採用辞退の連絡が来た場合の対応方法3:引き止める場合は相手に日時を合わせる
採用辞退の連絡が来た場合の対応方法その3は、引き止める場合は相手に日時を合わせることです。
一度辞退した企業とのやりとりは求職者にストレスがかかるものだと認識し、求職者の気持ちを推し量りながら慎重に日程調整しましょう。
直接会って表情を見ながら話す機会を設けることが理想的ですが、予定が合わない場合には電話やオンラインなどを提案してみましょう。
採用辞退の連絡が来た場合の対応方法4:あまりしつこくしない
採用辞退の連絡が来た場合の対応方法その4は、あまりしつこくしないことです。
求職者の気持ちを汲み、潔く辞退連絡を承諾しましょう。しつこくしすぎると求職者からの心証が悪くなり、企業の評判低下に繋がりますので、注意が必要です。
また、内定承諾後にやはり辞退したいと入社意志を撤回された場合、損害賠償請求ができるかどうかが問題になることがあります。これは、求職者と入社承諾書を結んだ時点で労働契約が締結されたとみなせることによります。
しかし、労働契約については労働者がいつでも解約の申入れができるため、たとえ承諾後の内定辞退であっても損害賠償請求はそもそも難しいことを覚えておきましょう。
採用辞退の連絡にメールで返信する例文
ここまでは、求職者が採用辞退する心理、採用辞退されないための対策、採用辞退の連絡が来た場合の対応方法について説明しましたが、実際に採用活動している方は辞退メールへの返信方法を知っておくと便利です。
以下で、採用辞退者へのメール文例を紹介しますので、テンプレートとして是非参考にしてみてください。
引き留める場合の例文
件名:内定辞退のお申し出の件
◯◯様
お世話になっております。
●●株式会社の△△です。
この度は内定通知にご返信頂き、誠にありがとうございます。恐れ入りますが、ご辞退に至られた理由や経緯について、もう少しお聞かせ頂けませんでしょうか。
弊社としましては〇〇様を弊社の一員として迎えたく、待遇面等について可能な限り調整したいと考えております。
再考の余地がございましたら、改めて面談の日程を相談させて頂ければ幸いです。お忙しいところ大変恐縮ではございますが、何卒宜しくお願い申し上げます。
引き止める場合には、再度話したい旨を伝えながら次回の面談日程の調整を提案しましょう。なお、ここでもしつこくせずに求職者が断る余地を与えることが大切です。
引き留めない場合の例文
件名:内定辞退の承諾の件
〇〇様
●●株式会社の△△と申します。
この度は内定通知にご返信頂き、誠にありがとうございます。〇〇様のご辞退について、弊社としましては大変残念ですが承知致しました。
数ある企業の中から弊社にご応募頂いたことに感謝すると共に、○○様の今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
なお、お預かりした応募書類につきましては、弊社にて責任を持って破棄しますので、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
引き止めない場合は、簡潔に辞退を受け入れ、応募書類の取り扱いについて明記しましょう。なお、応募書類の取り扱いについては法律で特に定められていませんが、トラブル回避のために処理方法を知らせておくとよいでしょう。
また、書類返送する場合には、郵送で書類返却する旨を伝える文面を追加しましょう。
施工管理・現場監督の採用辞退を防ぐ方法とは?
株式会社リクルートが行った中途採用実態調査(2019年度上半期実績、2020年度見通し)によりますと、建設業における中途採用で人員を確保できなかった企業の割合は50.6%になることが判明しました。
また、60歳以上の自社社員を積極的に活用している企業は78.6%、派遣社員や業務委託など外部人材を活用している企業は58.4%にもなり、人材不足に頭を抱える企業が多いようです。
施工管理・現場監督の採用辞退を防ぐ方法は、ターゲットが経験者か未経験者かによって異なります。
求職者が経験者の場合には、待遇改善を求めて転職している可能性がありますので、あらかじめ担当する現場数や現場の人員数を明確に伝えましょう。また、同時並行で複数の現場を担当するのかなど、求職者側が知りたい業務量の詳細を伝えると効果的です。
未経験者の場合、仕事内容や会社の魅力が伝わるように取り組みましょう。例えば、求人票の仕事内容欄に具体的な作業を書いたりするなど、未経験者に伝わるような工夫が大切です。
採用辞退の連絡が来たら冷静に対応しよう
採用辞退は、採用活動が無駄になるだけでなく、現場の混乱を招きかねませんので、企業の採用担当者にとってはできるだけ防ぎたい事態であると言えるでしょう。しかし、対応方法によっては企業のイメージダウンに繋がってしまう可能性があります。
求職者が採用辞退に至る心理や辞退防止策をあらかじめ知っておくことで、採用辞退の申し出を受けた際の冷静な対応が可能となります。
今回ご紹介した方法を参考に、自社にとって最適な人材の確保に繋げてみてはいかがでしょうか。
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