社内公募について
社内公募とは人事異動の種類の1つです。
一般的な人事異動は、発令権者による一方的な命令ですが、社内公募は自らの意思で社内の違う部署等への異動希望を申し出ます。
ただし、企業によって異なりますが、勤務年数や保有資格などの条件が指定されることがあり、さらには書類選考及び面接選考が実施されることから、希望すれば必ずしも実現するというわけではありません。
また、人事異動の種類にはFA制度と一般的な異動があります。それぞれの違いについても紹介します。
FA制度との違い
社内FA制度とは、社員の経験年数や業務成果などを社内他部署へ売り込むことで、社内異動を実現する人事異動方法の1つです。
プロ野球界で実施されているFA制度同様、一定の条件をクリアすることで、より良い勤務条件を得られる可能性がある方法です。
社内公募とFA制度の違いは、社内公募は求人型であるのに対し、FA制度は売り込み型であることです。
異動との違い
社内公募と一般的な人事異動では、社員自らの意思によるものか否かが大きな違いとしてあげられます。
一般的な人事異動の場合、本人の希望が考慮されないことから、モチベーション維持が困難な場合がありますが、自らの意思で異動が実現する社内公募は、社員のモチベーション向上に大きく影響します。
社内公募におけるメリット4選
社内公募を実施することで、以下のメリットが発生します。
メリットとは、人材の流出を防げる、社員のモチベーションアップが見込める、管理職への緊張感を促す及び採用コストを減らせることの4つです。
それぞれのメリットの内容を後述しますので、引き続きご覧ください。
社内公募におけるメリット1:人材の流出を防ぐ
社内公募におけるメリットの1つ目は、人材の流出を防げるという点です。
終身雇用制度に変化がみられる中、更なるキャリアアップを目指す理由などから正社員であっても離職することが珍しくなくなりつつあります。また、職種によっては若手の人材不足が深刻な問題となっている場合もあります。
こうした背景の中、社内公募の実施により、社員が満足して働ける環境とより良い労働条件を提供することで、人材流出を防止できます。
社内公募におけるメリット2:モチベーションアップが見込める
社内公募におけるメリットの2つ目は、モチベーションアップが見込めるという点です。
一般的な人事異動と違い、社内公募は社員自らの意思で異動を実現させることから、新しい異動が決まった場合、高いモチベーションで仕事に取り組むことが期待できます。
社員が意欲的に働くことで、社員本人のスキルアップに加えて、当該部署ならびに企業全体の活性化につながることもあります。
また、自らが希望する部署であるため、前述の人材流出の防止に効果を発揮します。
社内公募におけるメリット3:管理職へ緊張感を促す
社内公募におけるメリットの3つ目は、管理職へ緊張感を促せるという点です。
社内公募を検討している社員は、主に異動先の職務内容を重要視しますが、それと同時に該当部署における管理職のマネジメント能力も判断材料としています。
仕事自体に興味があった場合でも、管理職のマネジメントスキルが不足していると、異動後のパフォーマンスが十分に発揮できないと考えることから、当該部署に対する社内公募の応募は少なくなります。
こうした状況は、当該管理者の人事評価につながる可能性もあるため、社内公募を運用することは、各部署の管理職へ緊張感を促すことになります。
社内公募におけるメリット4:採用コストを減らせる
社内公募におけるメリットの4つ目は、採用コストを減らせるという点です。
新しい人材を補充する際に、新規採用や中途入社による手続きをした場合、求人広告、人材派遣会社等への費用及び求める人材を確保するまでに多大な時間を要することになります。
しかし、社内公募であれば、社外に求人を出す必要がありませんので、採用コストを大幅に削減したうえで必要な人材を確保できます。
社内公募で注意すべきポイント9選
ここまでは社内公募を実施することによるメリットについて紹介しましたが、一方では注意すべきポイントもあります。
人間関係が悪化する可能性があることや、不採用時のリスクに加え逃げる手段として使われるリスクなど、9つのポイントを紹介します。
それぞれのポイントを押さえることで、社内公募が円滑に進行するよう参考にしてください。
社内公募で注意すべきポイント1:部署ごとに差が生まれてしまう
社内公募で注意すべきポイントの1つ目は、部署ごとに差が生まれてしまうという点です。
社内公募を実施した際、部署ごとに職務内容等が異なることから、人気のある部署とそうでない部署など差が生まれることがあります。部署によっては、残業時間、休日取得状況及び各種手当等に相違が発生する場合があります。
同じ会社内であっても、待遇に大きな差がある場合は、社内公募を実施しても人材が集まらない可能性があることに注意しなくてはいけません。
社内公募で注意すべきポイント2:人間関係が悪化する可能性がある
社内公募で注意すべきポイントの2つ目は、人間関係が悪化する可能性があるという点です。
社内公募によって他部署へ異動したことにより、異動元において要員不足による仕事量増加など発生した場合、異動元の社員は異動した社員を良く思わない可能性があります。
また、異動先においても同様です。異動があったことにより、元々在籍していた社員が異動することもあり、これを理由に新しい部署での人間関係に悩むこともあります。
社内公募で注意すべきポイント3:不採用時のリスクがある
社内公募で注意すべきポイントの3つ目は、不採用時のリスクがあるという点です。
社内公募に応募しても、全員が合格するとは限らず、不採用の場合があります。ここでは不採用になってしまった場合のリスクについて説明します。
新しいの部署の職務内容に興味があるからこそ応募するのであり、募集から選考結果が出るまでの期間は自ずと新しい仕事に対して興味が傾くようになるでしょう。
この状況で不採用となってしまった場合、改めて元の部署の仕事に専念する必要があることからも、気持ちの切り替えが難しい場合があります。
また、不採用だったことに対して大きなショックを受け、元の仕事に対するモチベーションが低下するリスクもあります。
社内公募で注意すべきポイント4:逃げる手段で使われるリスクもある
社内公募で注意すべきポイントの4つ目は、逃げる手段で使われるリスクもあるという点です。
原則、社内公募は意欲的であり新しい部署での能力発揮を志す社員が利用する制度ですが、別の理由で社内公募を利用するケースも想定されます。
それは、元の部署の雰囲気になじめない、人間関係に苦労している、仕事に向いていないなど、元の部署から逃げる目的で社内公募へ応募する可能性があることです。
決して前向きな理由ではありませんので、仮に社内公募に合格した場合でも、新しい部署で同じことが繰り返される可能性も否定できません。
社内公募で注意すべきポイント5:応募条件にこだわる
社内公募で注意すべきポイントの5つ目は、応募条件にこだわることです。
社内公募の目的は、社員のモチベーション向上をきっかけとしたキャリア形成や、各部署或いは企業全体の成長につなげることです。つまり、応募条件を低くすることは、これらの目的が未達成に終わる可能性があります。
目的に応じた手段が社内公募ですので、応募条件を厳しく設定することは、社員及び企業の成長に欠かせません。誰でも応募が出来る仕組みでは、社内公募を実施する意義が薄れてしまうでしょう。
社内公募で注意すべきポイント6:公に話してはいけない
社内公募で注意すべきポイントの6つ目は、公に話してはいけないという点です。
社内公募で希望する部署があった場合、応募に関する情報については細心の注意を払う必要があります。それは、社内公募へ応募したことが、現在所属する部署の同僚などに知られた場合、状況によっては人間関係が悪化する場合があるからです。
また、希望が叶わなかった場合も同様です。選考に落ちたことが広く伝わることで、応募者のモチベーションが低下する可能性がありますので、やはり注意が必要となります。
社内公募で注意すべきポイント7:形骸化しないようルールを徹底させる
社内公募で注意すべきポイントの7つ目は、形骸化しないようルールを徹底させるという点です。
本来の社内公募も目的は、社員のスキル向上、部署の活性化、ひいては企業全体の成長にあります。しかし、社内公募のルールが曖昧であると本来の目的を逸してしまい、単純な人事異動の手段となってしまいます。
一般的な人事異動にはない目的を達成させるためにも、ルールを徹底することで形骸化を防止しましょう。
社内公募で注意すべきポイント8:直属の上司への報告は必須
社内公募で注意すべきポイントの8つ目は、直属の上司への報告は必須であるという点です。
社内公募へ応募することが決まった場合、直属の上司へ速やかに報告しましょう。
先ほど、公に話してはいけないと紹介しましたが、直属の上司は別です。選考過程において、現在の部署における仕事ぶり、上司及び同僚の評価などが加味されることからも、応募した事実を上司が知らないことは、上司に対して迷惑をかけることにもなります。
上司によっては、エントリーシートの書き方指導や模擬面接をやってもらえるなど、応援してくれる場合もあります。応募の決意が固まり次第、速やかに上司に報告相談しましょう。
社内公募で注意すべきポイント9:異動後のやり取りを密に行う
社内公募で注意すべきポイントの9つ目は、異動後のやり取りを密に行うという点です。
新たな人間関係をスムーズに構築するためには、異動先はもちろんのこと、異動元の部署も含めて、各種連絡を密におこないましょう。
こちらは社内公募の希望が叶い、新しい部署で仕事を始める際の注意点となります。特に、異動元でやり残した仕事があった場合は、やり取りを密におこなうことが必須です。
社内公募の主な流れについて
企業によって異なりますが、社内公募の主な流れを紹介します。
最初に行うことは、社内公募の実施について社員へ通知します。通知の内容には、募集を求める部署名及び応募に必要な各種条件等が明記されています。そして、希望する部署があればエントリーシートを人事部に提出し、書類選考または面接選考などを経て合否が発表されます。
社内公募を実施する際は、全社員に知らせることが重要です。知らされなかったことを理由に、応募する機会を失ったなどの紛議が発生しないよう注意しましょう。
社内公募を上手く利用し企業成長に繋げましょう
社内公募は、自ら望んで新しい仕事や新しい環境に挑戦することで、社員の更なる能力開花に期待できます。
また、社員個人の影響だけに留まらず、流動的な人事異動をおこなうことで組織の活性化につながるばかりか、優秀な人材の流出防止にも効果を発揮します。
一般的な人事異動に加え、社員のモチベーションを高める社内公募を併用することで、企業成長につなげましょう。
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