土木技術者の人手不足を解決する方法4つ|不足している理由もあわせて紹介

労務 2021.03.12 2022.12.21
土木技術者の人手不足を解決する方法4つ|不足している理由もあわせて紹介

土木技術者とは?


土木技術者とは、道路や鉄道、河川、上水道などの建設や土木工事に関する調査や計画、設計、施工監理などに関わるすべての技術者を指します。

具体的には、地形などの調査、設計図の作製、費用や期間、工事方法などを決めます。また、計画に応じた機材や作業員の手配、現場の指揮を執るなど、土木・建設工事に関わる土木技術者の仕事内容は多岐にわたります。

なお、土木技術者という国家資格はありませんが、2001年に公益社団法人土木学会による独自の4つの資格「2級土木技術者資格」「1級土木技術者資格」「上級土木技術者資格」「特別上級土木技術者資格」に分けられた土木技術者資格認定制度があります。

出典:土木学会技術推進機構ホームページ
参考:https://committees.jsce.or.jp/opcet/02_outline0

土木技術者が不足している理由3つ


土木技術者は、現在不足していると言われています。

バブル崩壊後の1990年代公共事業が減り、土木・建設需要は右肩下がりの状態が続いていました。しかし、2011年の東日本大震災をきっかけに土木・建設業界の需要は上昇へと転化し、震災復興事業や東京オリンピック関連投資などの影響もあり、人手が足りない状況です。

現在の土木技術者が不足している状況について、その理由をまとめました。

1:職人離れが増えているため

土木技術者が不足している原因の1つが、職人の離職率の高さにあります。きつく危険な仕事内容とイメージ、他企業に比べて福利厚生の不十分さが、高い離職率の原因と考えられています。

土木・建設業の仕事は、日給制の給料形態をとることが多く、働く日数によって給料が変動するため、不安定な傾向です。

さらに、厚生労働省発表の2019年度賃金構造基本統計調査によると、建設業の平均年収は414万円となっており、きつく危険な仕事内容でありながら、決して賃金が高いとは言えません。

このようなことから、土木技術者の数は横ばい、もしくは減少しており、高齢化が進んでいます。そして、今後もこの傾向は続くと予想されています。

出典:平成30年賃金構造基本統計調査の概況|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2019/index.html

2:若い人が入ってこないため

若者の入職者数が少ないことも深刻な問題です。若者が建設業に魅力を感じない理由は、「きつい・汚い・危険」を表す「3K」の印象が強いからと推測されます。

土木技術者は体力的にもきつい業務が多く、その現場作業は危険や汚れがつきものです。また、職人的な気質が色濃く残る業界であるため、厳しい熟練者から技術を習得する昔気質のイメージも、若者から敬遠される理由でしょう。

3:民間企業との競争が激しくなったため

建設業界は、スーパーゼネコンを頂点にその下に何層にも連なった下請け会社で構成された多重層構造になっています。つまり、業界全体が人手不足ということは、多くの企業が人手不足の危機に陥っているということです。

こうした下請け企業同士が、建設需要を取り合うだけでなく、優秀な人材をも奪い合う現状になっています。近年、有効求人倍率が数倍になっており、数社が同時に求人を出しても、1社しか人材を確保できないという事態になっています。

土木技術者の人手不足を解決する方法4つ


ここまで見てきたように、土木・建設業界は深刻な人手不足に陥っており、この状況はしばらく続くと予想されています。そのため、離職者の増加や若者の入職者減少などの現状を踏まえて、早急に解決策をとる必要があるでしょう。

ここからは、土木技術者を確保するための解決策について紹介していきます。

1:福利厚生を導入する

福利厚生とは、厚生年金保険や健康保険などの社会保険、雇用保険、労災保険などの法定福利に加え、各種手当や寮、託児所、社員旅行などの法定外福利があり、会社ごとにさまざまなサービスが用意されています。

福利厚生が薄いとされている土木・建設業界も、積極的に導入し充実させることで、3Kのイメージを払拭でき、若い作業員が安心して働ける材料となります。また、社員の仕事や生活の質を高め、分かりやすく待遇を改善できるため、人材確保に直接影響するでしょう。

さらに、国からの直轄事業は社会保険加入企業に限定されている場合もあるため、今や建設業界において福利厚生の導入は不可欠です。

2:若者のイメージを改善する

土木技術者の高齢化を阻止するためには、若い人の建築業界に対するイメージを改善する必要があります。3Kのイメージが付きまとう土木・建設業界の印象を変えるには、若者に業界の魅力をアピールすることと、興味がない層とも接点を増やす必要があります。

たとえば、若者に根付いているSNSを活用し、建設業界の若手人材が第一線で活躍するエピソードを発信したり、清潔感あるおしゃれな作業服を採用して披露するのも良いでしょう。

また、文系の学生や小中学生に向けた見学会や説明会など、一見土木技術者に遠いと思われる人材に目を向けてアピールすることも重要です。

3:労務費を抑制する

人材不足は、新規の人材確保や離職率の低下だけが対策ではありません。作業工程を工夫することによって工数を減らして労務費を抑制することができます。

作業の手間を省き工期を短縮する省工数化によって、待遇の改善にもつながり、結果的に土木技術者が定着します。

それには、まず既存工法の見直しと新たな省力化工法の導入が必要です。

4:従業員の生産性を向上する

現在の作業工程を見直し、生産性を向上させるのも、人手不足を解決する1つの手段となります。生産性が上がれば、当然少ない人的労働力で賄えるからです。

そこで、近年取り組まれているのが、ロボットなどを利用した省人化です。なるべく人的労働力を減少させ、可能な限りロボットなどを利用することが進められています。

さらに、技術者に代わって3K現場作業を機械が担うことで、悪いイメージの払拭につながります。

土木技術者の業務を効率化する方法


土木・建築業界の業務効率化は民間の企業努力だけでなく、国土交通省が率先して「公共工事等における新技術活用システム」を示すなど、主体となって推進しています。

その中でもっとも注目されているのが、ICT(Information and Communication Technology)、つまり情報通信技術の活用です。ICTは多くの業界で業務の効率化や拡充に利用されており、土木現場においても諸問題の解決に期待が寄せられています。

出典:技術調査関係|国土交通省
参照:https://www.mlit.go.jp/tec/gijutu/katuyo.html

データ管理を効率化する

国土交通省が平成30年に示した資料「新技術・データを活用したインフラ維持管理の効率化とその横展開について」によると、 維持管理や施工データなどにビッグデータ解析を導入し、補修や修繕計画の最適化が推進されています。

例えば、ICTを活用し、3次元データを用いた省力化などが挙げられています。

また、他の業種と同様、情報共有管理にはクラウドサービスの導入が効果的でしょう。現場と事務所間、さらには自宅とのリモートワークにも対応でき、工事状況などのデータをクラウド上で一元管理し、情報を共有できます。

さらに、クラウドサービスを活用することでデータの送受信や連絡が減るだけではなく、ITインフラやサーバー管理に割く労力や時間も省けます。

出典:新技術・データを活用したインフラ維持管理の効率化とその横展開について|国土交通省
参照:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/180510/pdf/shiryou5.pdf

定型業務を効率化する

他の業種同様、土木・建設業にも数多くの定型業務があり、それらに大きく作業工数を割いている場合もあります。

例えば、工程・資材管理などのタスク管理業務や作業記録の作成などは、より効率化できるシステムやツールの導入によって、大幅な削減が期待できるでしょう。

前述の国土交通省提出資料にも、「インフラ維持管理におけるロボットやタブレット等の支援技術の活用」による効率化が謳ってあります。パターン化した業務は、ICTとデジタル化を上手に取り入れましょう。

出典:新技術・データを活用したインフラ維持管理の効率化とその横展開について|国土交通省
参照:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/180510/pdf/shiryou5.pdf

土木技術者が不足している理由を把握しておこう


土木・建設業では若者の入職者が少なく、作業員の高齢化が進み、土木技術者の人手不足は深刻な問題です。東日本大震災や東京オリンピックなどを契機に需要が拡大しているにもかかわらず、離職者が多いのが現状です。

これには、労働環境を見直して魅力的な職場環境にすることが解決の一助になるでしょう。さらに、生産性の向上と業務の効率化も避けられない課題です。


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