外国人労働者受け入れ拡大とは
外国人労働者受け入れ拡大とは、2018年12月に成立した「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」の内容である、在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」に関するものです。
在留資格「特定技能」は、人手不足の深刻な産業分野において、一定の専門性や技能を有している外国人を積極的に受け入れようとすることを目的として創設されました。
出典:出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律の概要について|出入国在留管理庁
参照:http://www.immi-moj.go.jp/hourei/h30_kaisei.html
建設業における外国人労働者受け入れ拡大の現状
出入国管理庁の報道発表資料によると、2018年に「留学」等の在留資格から、就労資格への在留資格変更許可申請を行い、許可となった人数は建設業では1,055人となっています。
2013年の許可人数は292人であり、2018年許可人数の1,055人まで毎年増加しています。
新たな在留資格「特定技能」の創設の影響もあり、今後も外国人労働者受け入れ拡大の流れは続くでしょう。
出典:平成30年における留学生の日本企業等への就職状況について|出入国在留管理庁
参照:http://www.moj.go.jp/isa/content/930004451.pdf
外国人労働者受け入れ拡大の課題4つ
外国人労働者受け入れ拡大には、大きく分けて4つの課題があります。
それは、安価な労働力であるとの誤認識、日本人との生活格差、就労ビザ取得にかかる時間、労働環境の整備です。
以下の記事で、それぞれの問題点について解説していきます。
1:安価な労働力であるとの誤認識
外国人を雇用する場合には、法務省令で規定されている「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」という基準を満たす必要があります。
しかし、全国の労働局や労働基準監督署が、技能実習生の実習実施者に対して行った監督指導や送検の結果として、賃金の支払い額が法律の基準を下回っているケースが散見されます。
このことからも、外国人は日本人より安価な賃金で雇用ができ、労働条件が悪くても働いてもらえると考えている事業者が一定数いるようですが、この認識は誤りです。
出典:特定技能外国人受入れに関する運用要領|法務省
参照:http://www.moj.go.jp/content/001315380.pdf
2:日本人との生活格差
前述の通り外国人労働者は日本人と比較した場合に、法定範囲内の支払いであったとしても、安価な賃金で雇用されることが多いのが現状です。昇進などの面においても、日本人を優遇するケースが多いでしょう。
外国人労働者は年々増えているため、日本人との生活格差が拡大していく可能性があります。
3:就労ビザの取得にかかる時間
外国人を雇用する場合には、雇用しようとする外国人が就労できるビザを取得している必要があります。
ビザの申請の処理期間(申請してから許可がおりるまでの目安の期間)は、手続の種類によって異なりますが、およそ1〜4ヶ月かかります。書類の準備期間などを合わせると、さらに期間に余裕をもって申請しましょう。
また、在留資格には在留期間が決められており、在留期間を超えて滞在する場合は、更新や変更の許可を取得する必要があります。
出典:在留資格一覧表|出入国在留管理庁
参照:http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/kanri/qaq5.pdf
4:労働環境の整備
外国人労働者受け入れ拡大にあたって、公平な募集・採用、適正な労働条件・安全衛生面の確保、社会保険、管理、教育、解雇、再就職支援などさまざまな労働環境を整備する必要があります。
労働環境が整備されていないと、ただでさえ日本の環境になれていない外国人労働者にとっては、相当なストレスを与えることになってしまいます。
外国人労働者受け入れ拡大のメリット6つ
外国人労働者受け入れ拡大のメリットとして、以下の6つがあります。
それは、労働不足が解消できること、若年層の労働力が確保できること、新たなアイデアが生まれやすくなること、社内がグローバル化されること、海外進出の足掛かりとなること、社内が活性化されることです。
以下の記事でそれぞれのメリットについて解説していきます。
1:労働力不足が解消できる
外国人労働者受け入れ拡大の背景として、深刻な人材不足の問題があります。
受入れ対象となる業種・分野は、生産性向上や国内人材の確保のためにさまざな対策に取組んでもなお、外国人材の受け入れが必要と認められる業種です。
受け入れ対象となる業種においては、一定の専門性や技能を有する外国人材を幅広く受け入れられるようになりました。制度趣旨からも特定技能の在留資格を持つ外国人は、優秀な人材が多い傾向にあります。
そのため、積極的に特定技能の在留資格を持つ外国人労働者を受け入れることで、労働力不足を解消することが期待できます。
2:若年層の労働力が確保できる
外国人労働者の受け入れ拡大することで、若年層の労働力を確保することが期待できます。その理由として、日本国内における外国人の若年層の年齢階級別割合の高さがあります。
2019年の外国人の年齢階級別割合は20歳から39歳までが54%となっていますが、日本人では20歳から39歳までの割合は21%です。
このことから、在留外国人の若年層の割合は、日本人に比べるとかなり高い傾向にあると言え、外国人労働者の受け入れ拡大を図ることは、少子高齢化が進む日本において、労働力の若年化対策としての効果が期待できます。
出典:2019年の外国人人口は過去最高|みずほ総合研究所
参照:https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/pl200909.pdf
3:新たなアイデアが生まれやすくなる
外国人労働者は、国によってさまざまな文化や言語、宗教、価値観を持っています。日本人では気付かなかった問題点を発見することや、斬新なアイデアを思いつくことが期待できます。
外国人労働者受け入れ拡大は、異なる文化や考えを共有できるため、新しいアイデアが生まれやすい環境の構築にも役立つと言えるでしょう。
4:社内がグローバル化される
外国人労働者受け入れ拡大は、社内のグローバル化につながります。
外国人労働者の中には、母国語以外にも日本語や英語など数ヶ国語を話せるケースもあります。外国人労働者が身近にいることで、外国の言語やその国に関する知識、文化などを知ることができます。
また、日本国内でも英語を社内公用語にしている企業もあり、こうした会社はグローバル化の必要性を意識していると言えます。
5:海外進出の足掛かりとなる
外国人労働者受け入れ拡大は、海外進出の足掛かりとなります。
言語や文化の理解への手助けとなってくれる場合や、現地での人脈を持っている場合など、あらゆる方面での協力が期待できるためです。
海外進出を検討しているのであれば、外国人労働者の受け入れは積極的に検討すべき要素といえるでしょう。
6:社内が活性化される
技能実習や特定技能の制度趣旨は、人材育成を通じた開発途上国等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進することです。
技能実習や特定技能の在留資格を取得して日本で就職しようとする外国人は、向上心が高いケースが多いと言えます。
このような向上心の高い外国人を雇用することで、社内に新たな刺激が生まれ、環境の活性化に繋がります。
外国人労働者受け入れ拡大に伴う注意点4つ
外国人労働者受け入れ拡大に伴う注意点として、以下の4つがあります。
それは、文化の違いを理解すること、丁寧にコミュニケーションを図ることを心がけること、簡単な外国語は覚えること、外国人に対する労務管理の知識の取得に努めることです。
以下の記事でそれぞれの問題点について解説していきます。
1:文化の違いを理解する
外国人労働者は、それぞれ日本とは異なる文化や価値観を有しています。日本の価値観を押し付けたりせず、常識と思われることでも丁寧に説明することを心掛けましょう。
文化や価値観の違いについて理解し、外国人労働者に配慮した職場環境の構築に努めることが重要です。
2:丁寧にコミュニケーションを図ることを心がける
外国人労働者は、文化や言語の違う国で働くことに対して不安を感じているケースが少なくありません。
そうした不安を和らげるために、日本語や文化、会社のルールの教育など、相手の立場に配慮した丁寧なコミュニケーションをとることが重要です。
3:簡単な外国語は覚える
外国人労働者の中には、日本語があまり話せないという人もいます。
日本語教育のできる環境を整えることも重要ですが、言語習得の負担をすべて外国人側に要求するより、業務上よく使う簡単な外国語を覚えてしまった方が効率のいい場合もあります。
特に受け入れの多い国の言語については、積極的に習得するよう心掛けましょう。
4:外国人に対する労務管理の知識の取得に努める
2017年に全国の労働局や労働基準監督署が行った、外国人技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況によると、監督指導を実施した5,966事業場のうち、約7割にあたる4,226の事業場で労働基準関係法令の違反が認められています。
このような違反をしないために、外国人に対する労務管理の知識を取得に努めましょう。
出典:外国人労働者の実態について|厚生労働省
参照:https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000534465.pdf
外国人労働者受け入れ拡大について知ろう
外国人労働者受け入れ拡大とは、改正出入国管理法に基づき創設した在留資格「特定技能」に関するものをいいます。
特定技能の制度は、特定産業分野(14業種)での深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性や技能を有し即戦力となる外国人を受け入れることを目的としています。
詳しいことは法務省や、出入国管理庁ホームページで確認できます。新たな在留資格「特定技能」を詳しく知り、外国人受け入れ拡大に役立てていただければ幸いです。
出典:入管法改正による新しい在留資格特定技能の創設|外務省
参照:https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/ssw/jp/overview/index.html
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