採用コストについて
採用コストとは、企業が社員を採用するために使う費用です。
社員の採用は、企業が継続的に活動するために計画的に行います。採用コストと人材獲得は比例関係にはなく、自社の適正な価格を把握できない点が悩ましいところです。
採用コストは求人広告や採用試験を指しますが、広い意味では日常的な企業の魅力発信や製品の質を高めて企業ブランドを高める努力も含まれます。
市場の動向
求人市場の動向は人手不足を反映した売り手市場ですが、職種により多少の違いはあります。
建設業界や工事関係の人材は、数年来若手の不足が続いています。耐震化工事や各種構造物の老朽化に伴う保守管理は、需要に供給が追い付かない状況です。
また、施工管理や現場監督など知識と経験が必要な職種や有資格者も人材不足が深刻化しています。
採用コストの内訳について
採用コストを下げる対策を行う前に、現在の採用コストの内訳を確認します。
採用コストの内訳は「内部コスト」と「外部コスト」です。それぞれ前年と同じ内容や規模の予算化が一般的です。
それぞれの内訳がコストに見合った結果が出ているかを確認します。時代の流れと求職活動の変化を取り入れ、自社に合った採用戦略を構築する基礎資料に役立てます。
内部コスト
内部コストとは、採用担当者の人件費など面接や採用にかかる企業内の費用です。
内部コストには、面接担当の交通費や宿泊費の他、応募者に支給する交通費や会食費用、手土産代やノベルティグッズ代金も含まれます。内定者への引越し費用の支給やインターンシップ開催費用も内部コストに計上します。
社内でリファラル採用を行った場合の報奨金は採用の内部コストです。
外部コスト
外部コストとは、求人広告や会社案内のリーフレット制作費など社外に支払った金額です。
企業説明会の登録費用や選考会の会場費、人材紹介会社への成功報酬や採用代行も採用にかかる外部コストです。内定者に行う研修の講師への謝礼や内定者専用のSNSなども該当します。
採用人数や職種、企業規模によって利用サービスなどが異なります。
採用コストの計算方法について
採用コストの計算方法は、総額を採用人数で除するコスト単価が主なものです。
採用コストの総額は、内部コストと外部コストを加算します。内部コストの担当者の人件費はわかりにくく、算出が難しい場合もあります。
コスト単価は採用者1人当たりの金額です。項目ごとに1人当たりの単価を算出すると、費用対効果の見直しに役立ちます。
採用コストの平均相場3選
採用コストの平均相場は、新卒と中途採用、アルバイトの採用費用です。
就活で採用した新卒は、期間も金額も多くかかります。中途採用は年度途中に行うので、計画的に行う企業と必要に迫られて行う企業で違いが出るでしょう。アルバイトの採用は、職種によって募集人数や頻度が変わります。
今回紹介する相場は、外部コストだけの集計です。
採用コストの平均相場1:新卒の場合
新卒の1人当たりの採用コストの平均相場は、約53万円といわれています。
採用コストの平均は上場企業と非上場企業の違いはほとんどありません。製造業は非製造業よりコストが高くなっています。理系の優秀な学生が超売り手市場の結果です。
コスト低下の原因は、就活期間の短縮で、コストが全体に押し下げられたためです。
採用コストの平均相場2:中途の場合
2018年卒の中途採用の平均相場は、1人当たり約85万円といわれています。
中途採用は、外部コストの人材紹介や広告費などの費用が多くなっています。即戦力の優秀な人材を採用するために、人材紹介会社と多くの人への求人情報発信に投資した結果です。
採用コストの平均相場3:アルバイトの場合
アルバイトの採用コストは、全国平均が1人当たり約5万円といわれています。
コスト単価は新卒や中途採用と比較すると低いですが、採用人数が多いので総額は高くなります。平均相場を把握し、採用に役立てましょう。
採用コストを下げる対策12選
採用コストを下げる対策は、費用と募集方法の見直しです。
採用に使った費用を回収するためにミスマッチによる早期離職の防止やフォロー体制を充実させます。インターンシップを活用した自社を体験するチャンスの拡大も有効です。
リファラル採用やダイレクトリクルーティングなど、従来とは異なる採用方法も取り入れます。
採用コストを下げる対策1:求人原稿を見直す
求人原稿の見直しは、簡単で大きな成果を得られます。
求人原稿は毎年同じものを利用しがちです。給与や企業業績など数値の更新だけに終始せず、根本から見直します。求職者の求める情報は、企業の展開する事業やサービス内容と給与や賞与などの待遇です。
企業側の一方的な情報提供より、求職者目線に立った求人原稿に変更します。原稿の見直しにコストはかからないので、効率の良い対策です。
採用コストを下げる対策2:採用サイトを改善する
採用サイトの改善は、利用する採用サイトが自社の求める求職者とマッチしているかがチェックポイントです。
求職者の多くが見るサイトはもちろん効果がありますが、業種に特化したサイトもあります。掲載時期によって、目に触れるチャンスも変わります。地域密着型の企業は全国展開するサイトより、地元で人気のサイトに広告掲載などスタイルの変更も有効です。
採用サイトの課金制度も費用と効果を検証します。
採用コストを下げる対策3:採用後のミスマッチを防ぐ
採用後のミスマッチ防止は、採用コストがムダにならないようにするためです。
多額の費用を投入しても、すぐに離職してしまえば回収できません。面接試験で求職者から多くの言葉と本音を引き出します。グループ討議やプレゼンなど複数の面接形式を取り込み、実際の業務に近い状況を再現します。
企業と求職者の双方が「こんなはずじゃなかった」にならないよう、企業も真実の姿を伝えます。
採用コストを下げる対策4:フォロー体制を徹底する
フォロー体制の徹底は、内定者向けと入社後をリンクさせることです。
内定者には入社後の不安を取り除き、入社後は継続して相談にのります。地域密着型でも、知らない人の中では落ち着きません。内定時から同じ担当者が声をかけると安心できます。
「昔は」「自分たちが新人の頃は」と言っても通用しません。新人時代は質問したくてもできないことも多いものです。周囲が気配りして柔らかな雰囲気で新入社員を育てます。
採用コストを下げる対策5:HPを有効活用する
自社のホームページは企業の情報発信を行って魅力を高めます。
採用情報の記載内容は限られます。採用サイトで興味を持った求職者のためにスマホ対応にして、企業の活動内容や社員の画像を掲載します。職場の雰囲気を感じられると、応募の気持ちも高まるでしょう。
ハローワークのインターネット版への掲載も有効活用のひとつです。無料で掲載でき、転職希望者がいつでも検索可能です。
採用コストを下げる対策6:リファラル採用を活用する
リファラル採用は社員が知人を紹介する制度で、高い定着率が特徴です。
中途採用に多く利用され、通常の採用と同じように試験を受けます。採用後は紹介した社員に報奨金が支給されます。採用された社員は事前に会社の情報を知人から得られ、就職後も知人がいるので安心して働けるでしょう。
リファラル採用制度と採用情報は、社内SNSで発信すると効果を発揮します。
採用コストを下げる対策7:インターンシップを活用する
インターンシップの活用は、自社を求職者に知ってもらうために効果的な取り組みです。
新卒採用が対象のインターンシップは、少人数で短期間がおすすめです。企業側の負担を減らし、求職側の満足度を高めます。中途採用に対しては、短時間の会社訪問でも雰囲気の把握に役立ちます。入社後のミスマッチ防止に役立つことを説明し、参加を促します。
企業紹介を目的にし、終了直後に入社の意思確認を行わないことも重要です。
採用コストを下げる対策8:SNSを活用する
SNSを活用した採用はソーシャルリクルーティングと呼ばれ、求職者に人気です。
InstagramやTwitter、Facebookを企業の紹介と採用に活用します。企業情報を発信し続け、必要に応じて採用情報も盛り込みます。一般的な求人情報より、募集背景や入社後にできることを紹介しましょう。
「中の人」の発信は、求職者にとって貴重な情報です。公式サイトとリンクさせて、採用より企業情報発信を目的に取り組みます。
採用コストを下げる対策9:ダイレクトリクルーティングを用いる
ダイレクトリクルーティングは、企業から直接求める人材にアプローチする手法です。
ヘッドハンティングなどの積極的な獲得を指します。現在は、求人サイトと自社の採用ページのリンクで閲覧者を増やす取り組みです。問い合わせが気軽にできることが重要で、コンタクトが取れた中から意中の人物を口説き落とします。
求人サイトによっては成功報酬型もあり、コスト対策にならない可能性もあります。
採用コストを下げる対策10:内部コストを見直す
内部コストの見直しは、面接回数の削減や評価基準の統一です。
内部コストを見直す目的は、労力や費用の抑制と採用した人材の質の向上です。質問内容を工夫して面接回数を減らし、採用に使う時間を短縮します。良い人材を採用するために、採用業務マニュアルの策定と評価基準を徹底し、面接時のチェックシートを導入します。
採用業務全体の見直しは、会議の時間や報告書の作成など多岐に渡る内容です。
採用コストを下げる対策11:採用代行を利用してみる
採用代行は、内部コストの削減が進まない時や採用業務に時間や担当者を割けない時に利用を検討します。
社内で行う採用活動に行き詰まりを感じた時も採用代行は有効です。外部コストは上昇しますが、内部コストを削減でき担当者の負担を軽減します。複数の採用代行から、自社の業界に強みを持つ業者や費用を参考に選びます。
継続した採用がなく、必要な時だけ利用したい会社にもおすすめです。
採用コストを下げる対策12:助成金を利用する
採用に関する助成金は「雇用関係助成金」として国や都道府県単位で行っています。
厚生労働省のホームページでは雇用に関する助成金を紹介しています。ハローワークや労働局に問い合わせや申請を行います。労働基準法など労働関係法令に違反がないことなどが条件です。
建設業は働きやすい環境作りや人材開発支援も雇用関係の助成金の対象です。人材育成と雇用の定着で、採用コスト削減を目指します。
建築業界の採用コストの相場とは
2018年の建設業の中途採用コストの相場は、採用者1人当たり約46万円といわれています。
この採用コストは求人広告と人材紹介会社を利用した金額です。建設業界は求人広告より、人材紹介会社を利用した額が多くなっています。使える人材を必ず確保したい業界の事情が見えます。
中途採用は、施工管理や現場監督の経験者がターゲットです。育てる余裕のなさを浮き彫りにしています。
採用コストを明確にしてコスト削減を行いましょう
採用コストの削減は、現在の金額を明確にすることから始めます。
採用の内部コストより外部コストのほうが把握は簡単です。効果のない媒体をやめて、有効な手段を利用します。自社のホームページやSNSの活用は、求職者が求める情報を充実させ、魅力発信に重点を置きます。
採用代行の利用や助成金の活用など、従来とは異なる方法も試して採用コスト削減に取り組みましょう。
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