ICT土工とは
「ICT土工」とは、国土交通省が推進している、ICT技術を全面的に活用した土木工事の工程のことです。ICTは、「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略です。
国土交通省がICT土工、i-Constructionの取り組みを始めた理由はいくつかあります。建設業界の人材不足解消や生産性向上のため、また作業員の労働災害を軽減することや建設業界の経営状況の改善・作業員の待遇改善、安全性の向上などです。
ICT技術を活用した土工工事の工程
ICT技術を活用した土木工事の工程とは、測量・施工・検査・積算基準などに渡っています。
従来の測量から設計・施工から検査までの過程の中で、ICT技術を活用した土工として3次元データの契約図書化や3次元計測・3次元出来形管理や数量算出の3次元化などをすることでより視覚的に分かりやすくなります。
また、現場でのデータ共有を容易にすることで生産性や安全性が向上するとされています。
ICT土工の導入メリット
国土交通省が推進しているからと言っても、ICT土工の導入にはそれなりの手順やコストがかかってしまいます。それを考えても導入するメリットはあるのでしょうか。
建設業界は以前からいくつか問題を抱えてきていますが、ICT土工の導入でそれらを解決できると考えられています。ここではICT土工を導入することで、将来的に得られるメリットについて紹介します。
建設業の生産性アップ
建設業界では、長らく就業者数が多かったことから生産性の向上がおろそかにされてきましたが、ICT土工を導入することで施工効率を向上させ、施工期間を減少させることで生産性アップが期待できます。
長い間、建設業界では労働者数が過多だったことで生産性アップは必要とされてきませんでした。しかし現代では働き方改革や完全週休2日制の浸透などで事情が変わり、建設業も生産性アップすることを求められています。
人手不足
現在の建設業界は高齢化と深刻な人手不足に陥っていますが、ICT土工を導入することで人員を省力化して人手不足を補えるメリットがあるでしょう。
日本は現在、人手不足と言われています。それは建設業界も変わりません。ICT土工導入で測量や検査といった人手が必要な作業が省力化でき、必要な人員を減らせます。施工に必要な技能要件の緩和や安全性の向上により、建設業界で働く人を増やせるというメリットもあるでしょう。
ICT土工を導入することで可能になること4つ
ICT土工を導入することにより、従来人の手で行っていた労働力が必要な作業や、人手では出来なかったような作業が可能になります。
ここではICT土工を導入することでどんな風に変わるのか、測量から設計・施工計画、施工から検査にいたるまでの工程について解説します。ICT土工の導入初期は大変ですが、使い方に慣れると従来よりも便利で効率的に行えるようになるでしょう。
1:3次元測量
ICT土工の導入により、「UAV(Unmanned Air Vehicle/通称:ドローン)」やレーザースキャナーといった機材を使った「3次元測量」が可能となります。
レーザースキャナーでの測量はすぐに3次元データを入手できるメリットがあります。UAVでは測量時間を短縮させられる他、足場の悪い場所や災害現場の測量でも活躍します。ただ、強風や大雨など天候の影響を受ける他、航空法の対象となることに注意が必要です。
2:3次元設計データ・施工計画作成
UAVやレーザースキャナーを用いた短時間かつ高密度な3次元測量をして3次元データを契約図書化し、ICT建設機会での施工のための施工データ・施工計画を作成します。
従来は設計図から施工度量を算出していましたが、ICT土工では測量データを読み込むだけで簡単に設計データを作成でき、そこから効率的なICT建設機械による施工計画を立案できるようになるでしょう。
3:ICT建設機械による施工
ICT建設機械による施工では、従来の建設機械よりも施工量が増え、そのわりに作業員の数は減らしてより効率的な施工が可能となります。
ICT建設機械にはMC(マシンコントロール)による自動制御システム、MG(マシンガイダンス)による操作補助があります。これにより、操作にオペレーターが必要なことは従来と変わりませんが、より安全性を確保しやすく効率的な施工が可能となるでしょう。
4:3次元出来形管理・検査
従来では人手も作業量も必要だった出来形管理や検査ですが、ICT土工導入によりUAV(ドローン)やレーザースキャナーでより短時間かつ面的なデータで出来形管理や検査が可能になり、目視できない問題にも対処しやすくなるでしょう。
設計図通りに施工できているか、従来の出来形管理や検査にはかなりの人手がかかってきました。ICT土工を導入することで少人数での短時間作業となる上、より正確なデータを得やすくなります。
ICT土工でのi-Constructionの役割
国土交通省が2016年より推進している「i-Construction(アイ・コンストラクション)」において、ICT土工はi-Construction基準を満たすために必要不可欠な技術という役割を担っています。
i-ConstructionにはICT土工以外に「規格の標準化」や「施工時期の平準化」といった取り組みもあります。この3つの技術及び取り組みを推進することにより、建設業界のいくつかの問題解決を目指しています。
ICT土工の事例
ICT土工について理解を深めるために、実際にどのようなICT土工が行われているのか事例を紹介します。
ICT土工導入を推進されているといっても、実際にどんなものなのか分からないといった場合は、これらの事例を参考にしてみてください。
ドローンによる測量
近年無人航空機UAV(通称:ドローン)はよく活用されるようになってきましたが、建設業界でも飛行ルートを設定し毎日測量や解析ができる「デイリードローン」という事例があります。
従来の測量は数人で行う必要があり、決して簡単とはいきませんでした。しかしドローンによる測量ではドローン操縦者の作業だけで必要なデータを毎日得られ、解析が容易になるという効果がでています。
ICTブルドーザーの使用
ICTブルドーザーの使用事例では、ICTによる自動制御システムや操作補助により、従来の建設機械よりも操作が楽になった上、施工スピードを上げることに成功しています。
従来の建設機械では、現場によってはオペレーターの技量に依存する部分がかなりありました。しかしICTブルドーザーでは経験の少ないオペレーターでも問題なく施工が可能になり、人手不足解消につながっています。
ICT土工のメリットについて知ろう
国土交通省はi-Construction普及を目指し、ICT土工の発注を増やす方針をとってきています。現在の建設業界に高齢化や人手不足の問題があることからも、今後もこの流れは続くことが予想されています。
ICT土工は建設業界で今後必須となってくる可能性が高いので、どんなメリットがあるのか知って導入を検討してみましょう。
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